学生の文章の添削

以前は, 学生の書く要旨や卒論を真っ赤に添削し, どこがどうダメかをこんこんと教え諭していたが, 数年前にこのスタイルをやめた。理由は, 手間が膨大にかかることと, その割に学生の文章力が伸びた気がしなかったこと, むしろ, 学生が萎縮してしまって, 自由に書けなくなってきたことにある。

今は, 「文章みて下さい」と学生が言って来たら, 「その前に自分で何回か音読しな」と言ってひとまず返す。音読すると, 細かい誤字脱字や, まずい言葉遣いの多くを自分で発見するようだ。その後, 私が学生の前でその文章を音読する。最後に, その文章がわかりやすかったか, 面白かったか, を100点満点の主観的な点数で伝える。無論, これは私の主観的な印象だ, ということは付け加える。

具体的な修正は指示しない。わかりづらかった箇所は指摘することもあるが, 「こう言い換えればいいのに」とは言わない。人にはそれぞれ文章のスタイルがあるし, そのスタイルを自分で作ることだけが, 良い文章を自由に書けるようになる道だと思うからだ。

ただしそれには時間がかかる。社会に出て実務の文書を書く段階だと, こういう悠長なことは, やってられないだろう。だからこそ, 大学でやるべきことだと思っている。

負けず嫌いな子は, こういうスタイルで, ぐっと伸びるようだ。「君の能力を考えたらこの文章は50点だね」と言われてカチンと来るらしい。「もういいのに」とこちらが思うくらい, 何回も直して持って来る。